「完煎」~そのコーヒーの甘みを最も引き出す焙煎~

焙煎とは?生豆を煎り、豆の個性を引き出す。

焙煎は、芸術ではなく化学反応。焙煎技術とは、化学反応を高い再現性で起こす技術

海外から輸入された「グリーンコーヒー」とも呼ばれる生豆は、淡い緑褐色をしています。これを加熱(乾煎り)することで、我々が普段目にする茶褐色のコーヒー豆の状態になります。この過程で様々な化学反応が起こり、豆の中に含まれる香味成分が表に出てきます。

これは、緑茶を煎ることで茶褐色の「ほうじ茶(焙じ茶)」となり、香ばしい独特の薫りのお茶になるのをイメージして頂けると伝わりやすいかと思います。

前提として大切なことは、焙煎とはゼロから絵画を生み出すような芸術ではなく、「時間経過に応じて生豆にカロリー(熱量)を与えることで変性させる」という、数値・データによって裏付けられる化学反応であるということです。

これを何度繰り返しても高い再現性で行える技術を持った人が、プロの焙煎士です。

焙煎の「誤解」「焙煎の8段階」は統一基準ではない

実際の焙煎は、「無段階」。「8段階」の呪縛から抜け出す

一般に、コーヒーにはライト~イタリアンの8段階の焙煎度(ロースト)があると言われています。また、並行して「浅煎り」「中煎り」といった焙煎度の表記も見られます。しかし、「A店の『シティロースト』」と「B店の『シティロースト』」で焙煎度が違うのはなぜでしょう?また、「C店の『中煎り』」と「D店の『中深煎り』」が同じ焙煎度なのはなぜでしょう?

答えは、「焙煎度に明確な規定はなく、各店舗の焙煎士が感覚でやっているから」です。

例えば照度計などの機器を使って色温度を測り、それを全国の焙煎士が統一基準のもとに行えば意味がある分類でしょう。しかし実際の所は、焙煎士の匙加減でしかありません。また、実際に焙煎している側からすると、刻一刻と変化していくコーヒーの状態を8段階に分類するというのは、相当「大雑把な分類」だと考えます。

こういった理由から、当店では一般に使用される「ミディアム」「シティ」といった8段階の分類や、「中煎り」「深煎り」といった表記を行わないことにしました。

「焙煎には、もっといいスタイルがあるのでは?」料理人、バリスタという立場からの疑念

素材と真摯に向き合いたい条件の異なる「味比べ」にどんな意味があるのか

私は焙煎士でもありますが、日本バリスタ協会認定のバリスタでもあります。いわば、コーヒーを淹れるプロです。

また、本職はイタリア料理の調理に20年携わっているシェフ(料理人)です。そのシェフの目線から、コーヒーの「焙煎度」というものにずっと疑問を抱えていました。

それは、「豆によって焙煎度を変えることは、その豆本来の姿を本当に引き出しているのだろうか?」ということです。

例えば料理人が「近江牛」と「松坂牛」、「飛騨牛」を食べ比べるとします。この時、「近江牛は肩ロースを表面をさっと炙って」「松坂牛はランプにしっかり火を入れて」「飛騨牛はバラ肉をじっくり煮込んで」食べ比べて、「近江牛が一番おいしい!」なんてことはありえません。やるとするなら、全て同じ部位を、同じ条件の調理・火入れのもとに食べ比べます。

「ゲイシャは浅煎りで香りを味わってもらいたい」「マンデリンは深煎りにして苦みを際立たせたい」・・・そういったアプローチや意図を否定するわけではありませんが、そのように焙煎度を変数としていじることで、逆に豆本来の姿から遠ざかってしまっているのではないかという思いがありました。浅煎りにすれば繊細な香りは際立ちますが酸味(場合により酸っぱさ)も強くなり、ボディや甘みは出てきません。かといって深煎りにすればボディは出ますが心地よい酸味は失われ、苦み(場合より焦げ臭)やエグミといったネガティブな要素が強くなります。具体例を挙げれば、「浅く煎ったマンデリン」より「深く煎ったブルーマウンテン」の方が苦いのは当たり前です。これを飲み比べて「ブルーマウンテンって苦い豆なんだね!」と言われても、いやそりゃ違うんだぜと・・・(笑)。

「全ての豆を、ある理想的な基準の焙煎度に統一することが、豆に対して本当に真摯に向き合うということではないだろうか」と悩んでいたところに出会ったのが、「完煎」という考え方でした。

「完煎」とは味を尺度とした、焙煎度の統一基準

「完煎」に統一することで見えるもの焙煎度を揃えるからこそ、豆本来の違いが分かる

私が出会った「完煎」という考え方は、まさにその「理想的な基準の焙煎度に統一する」方法です。

「その豆の甘みが最も引き出されるポイントで煎り止めをする」というもので、その焙煎度はどの豆も同じです。

当店の焙煎は全て「完煎」一本です。

焙煎度が同じだからこそ、それぞれの豆の個性の違いもわかります。もちろん、豆の個性の違いを分かったうえで、「この豆を深煎りで飲んでみたい」といったご希望があればご相談下さい。

いわゆる意識高い系サードウェーブカフェで「カップ・オブ・エクセレンスの豆です、香りがいいでしょう!?」と言われて出てきたコーヒーがやたら浅煎りで酸っぱかったり、いわゆる純喫茶のストロング系深煎りコーヒーが苦くて困ったりと、いまひとつコーヒーが好きになれずに「結局ス○バのフラペチーノになっちゃうんだよね」という人にこそ、是非飲んでいただきたいコーヒーです。

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